椋野美智子の研究室にようこそ

椋野美智子の研究室にようこそ。この部屋では、社会保障や地域と福祉について椋野美智子がかかわったこと、考えたことをお伝えしていきます。

2017/04/30

アートによる古民家活用「浜脇の長屋」

別府は亡き父が40年間お世話になったところです。私も10年前に東京から大分に帰った時、町屋や遊郭や長屋など、風情の残る別府浜脇の家並みに強く惹かれ、何とか保存と活用ができないものかと思いました。そして、その想いを共有する、建築士の天野茂さんや古い建物のオーナーさん、まちづくりNPOの方々などと一緒に活動を始め、例えば補助金を得て、この地区の空き家の調査をしたり、古い建物をサロンに改修したりしました。ただ取組みはなかなか進まず、残念ながらこの10年で地区の多くの古い建物が壊されていきました。
そんななか、アート系のNPO法人BEPPU PROJECTの山出淳也さんから、古い建物にアート作品を制作し、その後は宿泊施設として活用するという提案があり、私が亡き父から受け継いで代表取締役をしている株式会社ひたのきの社会貢献として、築100年を超える長屋を一つ買い取ることとしました。そして、天野茂さんの改修で、ミラノ在住のアーティスト廣瀬智央さんに「天空の庭」を制作していただきました。2012年の別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」の時です。

買い取った時、長屋の一部にはまだ住んでいる方がおられたので、そのまま住み続けていただきました。その後、退去されたので改修をと思いましたところ、思ったより大変悪い状態でした。実は天野さんが昨年病気でお亡くなりになってお願いできなかったので、いろいろな工務店さんや建築士さんに当たってみたのですが、なかなか改修を引き受けてくださるところが見つかりませんでした。もう取り壊しもやむを得ないかと思っていたところに国東で工務店をしている今富正幸さんが手を挙げてくれて、今回の改修ができることになったのです。今富さんは、既存の建物の中に新たに頑丈な構造の箱をつくるというユニークな方法で、古い建物の保存と耐震化を両立させました。
リニューアルされた浜脇の長屋はBEPPU PROJECTさんがお借りになってアート施設として運営されます。


今回、改修した部屋に展示する作品は、フィリピン出身、フランス在住のアーティストであるラニ・マエストロさんが、2009年の「混浴温泉世界」の時に別府で制作したものです。その作品が別府に残らず、流出してしまうという話を山出さんからお聞きし、買い取りました。別府で皆様に鑑賞してもらうために買い取った作品なので、今回、常設展示の場が設置できて大変よかったと思っています。
 
 
また、リニューアルを祝して、廣瀬智央さんから新しいドローイングの寄贈もいただき、「天空の庭」に展示しました。

沢山の方の想いが詰まった空間である「浜脇の長屋」がアート宿泊施設として順調に運営され、アートによる古民家の保存と活用、地域の活性化の一つのモデルになってくれればと願っています。