椋野美智子の研究室にようこそ

椋野美智子の研究室にようこそ。この部屋では、社会保障や地域と福祉について椋野美智子がかかわったこと、考えたことをお伝えしていきます。

2016/03/20

ボランティアによる支え合い活動の創出

事業の概要


3月16日トキハ会館で開催された、大分県ボランティア連絡協議会主催の「地域の助け合い活動推進事業報告会」に講師として参加しました。当日は年度末の忙しい時期にもかかわらず、介護福祉士会や歯科衛生士会、生活協同組合コープおおいた、大分県ノルディックウオーク連盟、警察、社会福祉協議会、市役所などなどから50名位近くが参加していました。




事業は、介護保険の改正で、要支援の人たちへのサービスが地域の助け合い活動に移行するので、その受け皿をボランティアでつくろうとして行われたものです。昨年10月から3月まで大分県内6地区(別府市、大分市佐賀関神崎、大分市、玖珠町、宇佐市、佐伯市)で実施されました。



セミナーと呼ばれる講演会に始まり、6回~10回の生活ボランティア講座、そして講座を受けたボランティアによる地域の助け合い活動推進交流拠点づくりまでを半年間で行うという結構ハードなスケジュールでした。



講演会でその気になった人たちを、「鉄は熱いうちに打て」とばかりにボランティア講座につなげて学習してもらい、さらにその成果を活かして一気に拠点となるサロンづくりの実践までつなげるのが狙いのようです。



セミナーの人集めに苦労した地区、セミナーには来たけれどボランティア講座につながる人が少なかった地区、集まったのだけれど高齢すぎてサロン立ち上げが難しかった地区、さまざまでした。




私は別府市の事業に講師として関わりましたが、ボランティア講座の最終回に、終わりかと思っていたら「さあ、これから拠点づくりについて協議しましょう」とやるわけですから参加者は大変です。


とにかく、それなりにどの地区でもボランティアによる拠点活動が複数回実施されたのですから、事業は大成功だったといえるでしょう。どの地区もリーダーの熱意とバイタリティがすごいです。



医療や福祉の専門職団体はもちろん、ノルディックウオーク、警察署など様々な団体が講師派遣の協力をしたことも成功の要因の一つです。その体制づくりに奔走し、自分でも6地区すべてで講師役を務めたのは、大分県ボランティア・市民活動センター所長の甲斐賢二さん。残念ながら3月で退職ですが、引き続き嘱託として大分県社会福祉協議会市民活動支援部に籍を置き、今度はフードバンク担当だそうです。


これからの展開のために

各地区の代表の方、講師となった専門職の方、社会福祉協議会の方などから行われた報告を受けて、私が当日、最期に述べたのは次のようなことです。これからの展開が期待されます。


タテ割りを超えた支え合いの地域づくり

活動を通じて、医療や福祉の専門職、学校や郵便局や生協など、地域にある様々な団体と連携し、その協力を得ることで地域にネットワークができたことの意味は大きいです。また、今後、学校と連携して子どもたちにもサロンを利用してもらうという地区もありましたが、高齢者だけでなく子どもでも障害者でも、必要な人は誰でも利用できる支え合い活動をめざしてほしいと思います。支え合いの地域づくりは、支える側も支えられる側も、タテ割りを超えてつながることが大切です。


移動支援

住民が参加しやすくするためには、より小さな単位で身近な場にサロンをつくることが大切ですが、同時に、サロンへの移動だけでなく買い物や通院も含めた移動の問題の解決が不可欠です。大分県は住民による移動支援事業(福祉有償運送)が九州で唯一ほとんど動いていない県です。http://www.soumu.go.jp/main_content/000324420.pdf
権限が昨年10月から大分県知事に移譲されたので、今後、ぜひ実施について検討してほしいと思います。私もその支援をするNPO法人全国移動サービスネットワーク http://www.zenkoku-ido.net/indexに設置された「訪問型サービスDに関する調査研究委員会」の委員をお引き受けしました。何かできることがあればお手伝いしたいと思います。


専門職の方へ

さまざまな専門職が講師として地域と関わったことで、それぞれの地域で実際に何が課題なのかが異なる職種の人たちに共有されたのは素晴らしいことだと思います。これを活かして、住民とともに、地に足の着いた多職種連携の地域包括ケアが推進されていくことを期待しています。

市町村職員の方へ

市との考え方の違いに苦労するとの社会福祉協議会の方の声がありましたが、制度を所管する行政と地域を見ている社会福祉協議会の考え方は確かに違うことが多いでしょう。地域ニーズをしっかり市町村に伝えるのは社会福祉協議会の役割です。そのニーズに対応するために制度の活用に知恵を絞り、どうしても制度が合わなかったら制度を変えるように働きかけること、それが、国にも県にもできない、制度と地域の接点にある、基礎自治体である市町村の仕事の醍醐味です。頑張っていただきたいと思います。