椋野美智子の研究室にようこそ

椋野美智子の研究室にようこそ。この部屋では、社会保障や地域と福祉について椋野美智子がかかわったこと、考えたことをお伝えしていきます。

2017/01/10

日本医療社会福祉学会副会長に就任して



2年前に大学を退職して、現職時代には時間が取れなかった様々な活動に関わるようになり、20169月に日本医療社会福祉学会の副会長に就任しました。
私の医療社会福祉との関わりは、1989年の医療ソーシャルワーカー業務指針の作成を厚生省で担当したことに始まります。社会福祉士の実習機関として医療機関を認める2006年の告示改正にも関わりました。
その後、研究者に転身して大分大学教授に就任し、社会保障、福祉政策の研究を進め、2012年には本学会第22回大会で「医療ソーシャルワーカーの歴史を振り返り、未来を展望する~政策の視点から~」と題する基調講演を行いました。その内容は修正加筆して5月に出版予定の「保健医療ソーシャルワーク~アドバンスト実践のために」に掲載しています。
そこでも述べましたが、超高齢化の進展、総人口の減少、低経済成長の常態化、国家財政の逼迫の下、社会保障は機能強化と効率化の二兎を追うことを求められ、必要とされる医療の内容は「病院完結型」から、「地域で直し、支える『地域完結型』」に変わってきています。
病院での退院援助に力を入れることにより飛躍的な人員の伸びを達成してきた医療ソーシャルワーカーも、今後は地域での活動の強化が求められることになります。それは、退院後の地域ケアのコーディネートであり、地域内での多職種協働の調整であり、地域での看取りを視野に入れたサービス調整等々です。
一方で、「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部の議論にみられるように、労働力減少に対する強い問題意識の下、福祉サービスを持続可能なものとするため、分野を問わない包括的な相談支援の実施やこれに対応した総合的な福祉人材の確保・育成も政策的に進められようとしています。
しかし、このような経済社会の変化、保健医療福祉政策の動きに対応する具体的なソーシャルワークのあり方について、これまで必ずしも十分な研究の蓄積が行われてきておらず、本学会が今後果たすべき役割はきわめて大きいものと考えられます。
本学会が社会の負託に応え保健医療分野のソーシャルワーク研究の推進に貢献できるよう、微力ながら努めていきたいと考えています。